集英社新書「TPP亡国論」中野剛士著2011・12刊。

 衆議院が解散されて2週間目。

 第3極といわれる政党の収斂が進んでいる。昨年東日本大震災による原子力発電事故という大災害を受けながら この問題を前面に出し最大の「公約」に取り上げるべき政党が出現し、原発政策を議論してほしいと考えていたが、ようやく、女性党首の「日本未来の党」が出現した。
 橋下市長に期待したが、案の定ぼけ始めてきた。今週末、来週末の支持動向が気になる。

 今回の総選挙のテーマに「TPP問題」がある。3年前の民主党に大いに期待したが3年間でまったく、影も形もなくなった感じだ。
この問題は、昨年秋に菅 当時の総理のとき、突如として出てきた。今度の総選挙では、この問題は、農業従事者の投票に絡むだけに民主党自民党とも、表現こそ違うが取り組み方は同じに映る。
 
 本書で著者の主張する論はデフレ進行のこの時代、まだデフレがストップしていないこの時期に、さらなる自由化競争はさらなる価格の下落を招くとし、また、民間の資金需要のない時代、金融政策だけでは景気好転にはならず、政府部門が財政で積極的に出動を図り、景気の好転後にすべきだと主張する。
 新自由主義の競争はいいが、その後遺症は現在の日本経済にいたるところで表れている。イギリスのサッチャー時代、アメリカのレーガン時代はインフレの時代での規制緩和などによる自由化競争は、理論的であり自由化競争は有益であった、という。現在の日本はそのような時代ではないと分析する。

 著者は「経済ナショナリズム」を専門とし、英国エデインバラ大学より社会科学の博士号取得し、経産省産業構造課課長補佐という経歴の官僚出身の新進の学者である。最近興味深い著書を出している。
 TPP交渉の戦略の在り方、米国との経済交渉は、増大、膨張する中国の力に対し日米安全保障を踏まえながら、単なる経済理論でかたずけらない問題を考えねばならない、など興味ある内容が多い。

 日米とは、過去日本の高度成長時代、日米繊維交渉、資本自由化などいろいろの大きな山を乗り越えてきた。しかしこれからの日本は成長の条件の少ない与件で戦わざるを得ない。「知財戦略」「FTA/EPA」戦略と合わせつつ、門を開く時代だろうと考える。
この問題、今度の選挙の各党がどう主張するか。実行力を含めて試されるのではなかろうか。(了)