2012年末に。草思社「親日派のための弁明」金完ソプ著2002・7刊

 3年余りの民主党政治から自民党政治に戻る。3代続いた。大体3代で終わるとよく言う。民主党もそうなった。期待が大きかっただけに期待が外れると、腹が立つ。それでも目線を低くした政治もあり、少しは評価してもよい部分もある。
 「高校授業料無償化」。この20年デフレの進行で、親の失業という家庭の事情で高校に行けなくなり、かつ就職試験の際の面接に着る制服も買えない頭の良い高校生が、フリーターとなり野宿するルポルタージュが3〜4年前自民党政権時NHKで放映され心を痛めたが改善されたであろうか。今後自民党は所得制限を検討というが、今どきの財政事情からやむをえまい。働き口がないといって生活保護を受け取っている若い人が多い。雇用主に就業手当を補助し、介護現場などの雇用がもっと拡大しないのかと考えるが、復興と同じく遅遅たるようだ。
 民主党の「防衛」「教育」は最後までだめだった。特に「教育問題」は今回総選挙のテーマで語られた記憶がない。「学力低下」「いじめによる自殺」が頻繁になっているのにである。
 この点自民党は早速次の政権で「教育委員会改革」など具体的に取り上げハギレ良い。早速教育に通じた大臣を配置し取り組むようだ。期待している。
 今年は,昨年8月に続き、厳寒の2月韓国を訪問したこともあり、朝鮮の歴史を「古代朝鮮」「高麗」「李朝」「併合時代」「動乱」「戦後政治」をテーマにして何冊かの本を集中して読んでいる。研究者、ジャーナリスト出身などの日本人の著書に限らず韓国で活躍している現役の研究者の書いたものを探し読んでいるが、表題の本の著者は本書で初めて知った。ソウル大学物理学部天文学を専攻した経歴を持つ。10年前に出た本であるが、韓国ではベストセラーになりながらも有害図書指定の本という。日本では公平な立場から書かれた日韓の歴史書と紹介され、韓国に活動の場を持ちながら書いた勇気のある本の著者でもある。10年前まだ40代の若い韓国の世代にこのような研究者が出現していることは素晴らしいし、日本人の中からも出て、いい日本ー韓国関係を形成してほしい、と願っている。竹島のような愚かなことは卒業して。
 同著者には「親日派のための弁明2・2004・11刊・扶桑社」「日韓禁断の歴史2003・11刊・小学館」がある。また同著者が韓国内で良識派だと評している李完用の子孫の李栄薫(イヨンフン)著に「大韓韓国の物語」がある。
 国内ではいろいろの研究者、ジャーナリスト出身の書かれた本があり、ここでは取り上げないが呉善花著「韓国併合への道」(文春新書)はまとまり、深い内容で読みやすい本だ。今年秋に改訂版が出た。最後の2章現代の時事に合わせ追加改訂している。
 朝鮮の歴史全体を見るに三省堂朝鮮史研究会編が20版重ねた「朝鮮の歴史」が物語的に全体の歴史の流れを俯瞰できる。特に李朝の初期は賢帝が出たが20代以降は勢道政治、垂簾政治が行われ,賢帝とは程遠い政治となった。官職を金で買うなど国内政治は乱れた。そこに若い有能な官僚、金玉均(キムオクキュン)たちが日本の福沢諭吉に学んだりして朝鮮の文明開化を求め、改革を志した。
 小説では角田房子著「閔妃暗殺」が日清・日露戦争時の翻弄される李朝宮廷内の権力争奪に有能な若い改革青年が次から次に犠牲になる姿が描かれていて、「韓国併合…」「朝鮮の…」に書かれた歴史の変遷を再度確認できる。
 マスコミの情報でなく、いずれかが正義かはやはり1800年頃から1940年頃までの朝鮮に対する西欧、米、中、露各国の関係の中で日本がどういう行動をとったかで判断すべきで、「自虐視」思想でなく、日本人の中にも 朝鮮独立運動家を支援し、「日本のシンドラー」と呼ばれ 2004年10月に韓国建国勲章を日本人で唯一授与された「布施辰治弁護士」という東北出身の日本人がいることを忘れてはいけない。この勲章を授与された日本人は他にいない。布施辰治については「弁護士布施辰治・大石進著・2010・10刊・西田書店」という著書がある。