中公新書「韓国とキリスト教」浅見雅一・安廷苑著・2012・7月刊

 隣国、韓国について「古代朝鮮」「高麗」「朝鮮王朝」とあまりこれまで読んでこなかった「隣国の歴史」を勉強している。特に客観的記述に注意し冷静に読んでいるが、三省堂朝鮮史研究会より1995年から10刷以上出版されている「朝鮮の歴史・新版」が整理された内容で「読本」として読みやすい。併せ今回は標題についての事実に興味があったので出版直後早速手にした。
 今回は私見をいれず日本と同じグローバリズム経済で闘っている現代韓国の宗教の背景について本書に沿って考えてみたい。
 共産中国は別にして、同じ漢字文化 国教として儒教の強かった韓国がキリスト教信者の多いのは何故か?詳しい内容は本書の熟読を願うとして、先ず統計上の韓国の宗教人口構成は、2005年調査の韓国統計庁の発表によると総人口4728万人中、「宗教あり」と答えた人は53.1%逆に「宗教なし」と答えた人は46.5%、「あり」のうち「仏教徒は43.0%」「プロテスタント34.5%」「カトリック20.6%」「儒教0.5%」と言う。全人口では夫々「仏教徒22.8%」「プロテスタント18.3%」「カトリック10.9%」である。(2010年12月現在の人口は5143万人。)
 韓国はキリスト教徒が多いと言われるが仏教徒もそれなりに多いことがわかる。日本ではキリスト教を合わせて考えるが、韓国では厳密に区別しプロテスタントを「基督教・キドッキョ」あるいは「改新教・ケシンギョ」,カトリックを「天主教・チョンジュギョ」と呼んでいる。一般に「教会」は「プロテスタント教会」を指し、カトリック教会は「聖堂・ソンダン」と呼ぶ。
 「何故、幾多の弾圧、迫害にも拘わらず、日本と異なりキリスト教が根付いたのか」
日本では遠藤周作の小説に見られるように徳川初期にその弾圧は激しかったが、朝鮮では朝鮮王朝末期の第26代高宗の父,興宣大院君の時代に各地で激しい弾圧があった。その後の「併合時代」を通し 民衆に根付いた背景、朝鮮の歴史の中、他民族より侵略を受けつつも抵抗し 国内の弾圧を受けながらも民主化を求めた知識人、民衆の儒教を踏まえた強い底力が「天道教」を生みそれが遠因となり日本の併合時代に耐え、その後アメリカから入ったプロテスタントの影響が儒教社会にもかかわらずキリスト教国になったのではと感じるが。九州に近い釜山は仏教徒が多いという。