集英社新書「必生 闘う仏教」佐々井秀嶺著(2010・10刊)を読む。

 約5年前の日経新聞夕刊(2006・1・26) ヒンドー教のインドで、バンテージー(上人)ササイと呼ばれ、カースト最下層の人々の先頭に立って仏教の布教活動をしているという日本人の紹介記事が出た。どのような生き方をしているのだろうと興味を持っていたが、最近著者による「必生 闘う仏教」が出版され早速一読した。

 9月のブログ「インド厄介な経済大国」で取上げたインド多宗教国家の現況。本書はその中で圧倒的ヒンドー教徒の多い社会で、ヒンドー教では人間として認められない、「アウトカースト」という「不可触民」と呼ばれる民衆のため働いている日本人仏教指導者の思想,行動の本である。著者はイスラム教徒、キリスト教徒、仏教徒ジャイナ教徒などマイノリテイ・コミュニテイのなかで 2003年インド政府よりこれまでチベット仏教徒しか選ばれなかった
「少数者委員会仏教徒代表」に任命された。
インド国民10億人中「アウトカースト」からの仏教徒は公表1千万人に対し実質1億5千万人位という。公表数字のイスラム教徒とほぼ同じ数である。

 筆者は時折「仏法法座」に参加している。
「安寧、安らぎ」という宗教心の言葉に対し、「闘う」という激しい言葉、宗教心と180度反対であるような言葉。著者は「ヒンドー教で最下層民衆に『右の頬を打たれたら左を』と言っていたら虫けらのように踏み潰されてしまう。そこから解放するには『慈悲心による金剛の大怒』これが闘う仏教の精神と本書で述べているが。

 インドを旅する日本人仏教徒から受ける印象について語っている。「日本という小さいな国の中で、仏教が小さな宗派に別れ、又小さな我見にとらわれ、やれこちらが正しい、やれそちらは駄目だと互いにそっぽを向き合っているようでは、もはや伝統的宗派は一般国民から見放されるだけでしょう。すべての日本仏教が宗派を超えて話し合い、実際の社会問題に対する統一見解と対策、国民に向かい明示するべきではないでしょうか」と。(本書)

 本書読了後の翌日、朝日新聞(2010・12・16)が「インド貧農下克上・貧農が出稼ぎで農地買収・カースト上位の地主に反抗・選挙でも存在感を」と報じた。インド社会も進化してきている。

 仏教界はともあれ 『自身の宗教心の練磨を・南無阿弥陀仏』。