平成22年盛夏に思う。「資本主義・2.0」水野和夫・島田裕巳著(2008・5)講談社

 平成22年の夏は猛暑の連続だ。北海道が35度以上になるのははじめてである。東京より暑い日が何日もあった。

 このブログ開始して満2年。2年前の8月にスタートし、月1回を「読書」中心に筆者の考え、と若干の本の紹介をと思い書き始めた。3カ月坊主かと思ったがどうやら2年持ちこたえた。(途中1回体調不良でパスしたが。)ブログで月に何回も書く方がおられるが脱帽である。この「はてな」のブログは丁寧で必ず他のブローガーの方の記事を紹介してくれる。内容が大いに参考になる。


 社会の動きの中で「なにやらおかしい」のを見逃さず、「はずさぬように」と書いているが亡くなられた「作家城山三郎さん」の言葉に「リーダーはあるべきものを追求する」という至言がある。それからすると、今日の各界のリーダーの中には立派な方もおられるものの、「あるべき」から反(そ)れる感のある人がなにやら多い。若い社員を育てる工夫より派遣社員契約社員を安く活用し自社の利益を最大にするような会社のリーダーが経済界のトップになるようなことは、やはり「あるべき」から反れていると考える。 経済界に限らず、マスコミ界でもスキャンダルのため大手新聞社トップから追われた人間がいつの間にか野球賭博で世間の糾弾を受けている相撲界の団体の役員になったりしているのを今日知り吃驚している。「日本のあるべき姿」がかなり「イビツ」になっていると考えているのは筆者だけとは思わない。一回りも上の大先輩から「暑中見舞」の中で「此の頃は社会万般が不愉快なことが多く、いらいらしています。」という便りを戴いた。明日は「終戦記念日」同じ轍を踏まないようTVなどは特別番組を組んではいるが。

 このブログを開始の動機になった理由に 開始の1年前 水野和夫著書『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』を読了した。500年スパンで考えた水野著に大いにうなずく部分があった。あるサイトに投稿したがいつの間にやら消されてしまった。
 その後思い立った「読後の所感のまとめ記録」がこのブログ開始の発端である。もちろん「著者の権利」を踏まえ「紹介」を努めている。

 「水野本」が出版された時期に「金融帝国論」「資本開国論」などの著書が出版されたが、当時の経済書にはこの500年スパンの発想は異端 少数意見、少数論者であり TV討論会では水野氏はむしろやり込められていた記憶があるが、同氏の著書を誰よりも早く取り上げ、評価し解説した人に榊原英資先生がいた。このことはこのブログ第2回「強い円は日本の国益」(2008−10−18)に書いた。

 その水野和夫氏について先月30日 朝日新聞内閣府官房審議官として経済財政分析担当に当たると報道していた。いはゆる「経済白書」の執筆である。「ゼロ成長でも豊かに成長できる社会を」提唱しているが、今からどう日本の経済を分析していくか?ようやく従来にない発想のするエコノミストが社会に認められたかと内心うれしく思う。

 水野氏はその後宗教学者島田裕巳氏と対談した著書「資本主義2.0」(2008・5・講談社)を発表している。その中で「日本の一人当たりGDPは34000$、中国2500$、インド970$(いずれも当時)。中国、インドの水準から見て34000$あっても豊かでないというのは新興国にとりモデルにならない。GDP成長 2〜3%でないといけないこと自体おかしい。1995年以前の『資本主義1.0』はインフレ、人口増が前提、少子高齢化の日本はこれまでの「資本主義1.0」では対応できなくなっている。」と述べている。(本書) いずれにしても読後感のいい本の著者が2年後 3年後評価を受けるのは読者として本当にうれしい。それが出版時点で少数派なら尚更である。

 朝日新聞が今年4月「ゼロ年代の50冊」という企画を行った。識者アンケートによって2000年に出たジャレド・ダイヤモンド著「銃・病原菌・鉄」が第1位に選ばれた。50冊の中に佐藤優国家の罠」が選ばれた。佐藤優についてはブログ(2009-8-12)で取り上げた。

 良書なのに「ゼロ年代の50冊」以外と読んでいない。著作の氾濫。書籍バブル。その中から『真贋』の選別。暑い夏も大変なり。