文春新書「ブログ論壇の誕生」佐々木俊尚著

 アナログ世代にとってはデジタル世代といわれる若い世代が パソコンを駆使しインターネットより必要情報を取り仕事を手際よく処理する姿はうらやましくもある。佐々木著はこの春「ネットVSリアルの衝突」(文春新書)以来久しぶりに読むと 気がつかない世界をいろいろ気づかせてくれる。

 アナログ世代には目に見えるもので判断する悪い「キライ」がある。佐々木著には「ネットVSリアルの衝突」でも取り上げていたが、「目に見えるもの」と「目に見えないもの」を対比し考えさせる「テーマ」がある。

 本書は「目に見えるジャーナリズム」と「目に見えないロストゼネレーションを中心とするインターネット世代のブログ」を取り上げている。

 中高年アナログ世代は 小生はじめ新聞を「スミ」から「スミ」まで読む。更にはスクラップし保存し参考にする。
 新聞を読みながらマスメデイアを中心とする現在のジャーナリズムは「どこまで本質を取り上げ、追求しているか?」半分は懐疑を持って読んでいる。肝心のテーマになると避けるか 触れず いはば「どうでもよいようなテーマ」に取り組んでいるように思える時もある。
 組織の縛りを脱し大新聞を退職した後フリーになった記者に骨太い記事を書く記者が多い気がするが現役時代はそれがなかなか書けないのではないか、と素人ながら考えている。(CSテレビは地上波と比べはるかにいいが。) しかしなかには日経記者で現役時代 自分の会社の社長を「日経新聞の黒い霧」の中で書き 告発し退職させた大塚将司(最近では「流転の果て・上下・・ニッポン金融盛衰記85〜98)など記憶にあるがそういう猛者はそう多いと思わない。フリーの上杉隆田中宇は関心を持って読むことにしている。
 一方インターネットを中心とする世代はブログの中で彼ら自身が進行している現代の格差社会問題を自らに問いかけ発信している。
このブログのなかにこそ現代社会を考えさせる本質のテーマと意見があるのではないか、と考えている。今日「ブログ論壇」でブログ開設している数は3日坊主含めて古いが2006年4月現在868万人という。

 本書(P120)に ある政策大学院教授が 「日本の将来のために若者に我慢と辛抱を教え込み若者を正社員にしたくなるよう鍛え上げねばならない」という趣旨のアナログ世代の大賛成しそうなコラムを発表したところ 猛烈な反論がロスゼネ世代より出されたという。その反論は本書に書いてあるが、更に驚くブログが「団塊世代を皆殺しし日本をよくする」という誠に恐ろしい 内容がのっている、という。
 中高年アナログ世代は掲示板、ブログでどのような言論が展開されているか把握していない、と本書で指摘している。 ここにマスメデイアで追求されていない社会の諸問題が、とくにこれからの日本の中核を担う30代40代のロスゼネ世代の「生の声」詰まっていると考える。

 アナログ世代の者としてもう少しこの「ブログ論壇」に関心持つ必要を強く感じた処である。
これらの「ブログ論壇」で叫ばれている「国民の声と離れた政治」に対する不信の声は 若手軍人が正義に燃えて素直なはけ口として「行動」した「過去の歴史」がある。

現代は1910年代から30年前半と似ている現象が多い。前回書いたアンドリュー・ゴードン著「日本の200年・徳川より現代まで・上下」の9・10・11章に示唆に富む記述ある。
もう一度静かに読もう。