みすず書房・「日本の200年・徳川より現代まで」アンドリュー・ゴードン著

100年ぶりの金融恐慌、大恐慌という歴史の中にいる。40年周期の半藤史観をとれば1990年からスタートした衰退の歴史は後20年弱、インターネットでの収縮を考えれば少なくとも後10年の下方波動の中にいるのかと考える。日経ダウも26年ぶりの安値更新した。
 
 歴史を100年のタームで分析 考察の書は半藤一利の「昭和史・上下」その他の歴史書があるが より長いスパンで取り上げ、「日本人とはこれで良いのか」と内省する際に なんら気負わず考えさせてくれる本がある。

 アンドリュー・ゴードン「日本の200年・徳川から現代まで」。
著者はアメリカ人、エドウインライシャワー日本研究所長の経歴のあるハーバード大学歴史学の先生である。この本は ヨーロッパ、アメリカで日本歴史の教科書としてスペイン語 英語などに翻訳されているらしく、専門書であるもののその時代その時代の市井の暮らし向き 出来事を物語的に述べてあり、以外に読みやすいし、いろいろきずかせてくれる。
蟹工船」等がマスコミに取り上げられたが、現代事象と類似の事象が意外と多く、驚かされる部分がある。
 何よりも読後一番感じたのは 偏向からの完全自由で 右も左もない、取りつかれた主義・押しつける思想も感じない。まったくの更地で日本を振り返り落ち着いて読めることである。しかも小説風に。

 何点か現代社会と似ている部分として (1)1912年大正政変から1932犬養暗殺までの20年間の短期政権の変遷、(2)格差問題 貧困問題の多発で労働法制の確立などの社会政策の必要性の云々。(3)昨年大連立が云々されたがその理由のおかしいくらいの一致。
 更に今日 資源問題の限界で外需に頼れなく内需拡大がいわれているが 戦後の 中山伊知郎教授VS都留重人教授の論争など現在の我々に暗示示唆してくれる部分が多い。

「日本の200年」読後し思うのはやはり明治を作った人物より今日学ぶ点がすこぶる多いということである。明治時代の偉大な人物に焦点が行きすぎ個別なる個人の業績に埋没するが この著書「日本の200年」を左手に置き右手で個人の業績を読むことにより 現代の我々にいい示唆をくれるのではないかと考える。逆に言えばこの本はあまり個別は志向していない。

 この本を通じて 明治維新 太平洋戦争と2度否定された日本の歴史の中に 研究すべきテーマとして2点ある、ということである。

 1つは 江戸時代の1700年代隆盛を誇っていた中国思想に対抗し 本居宣長平田篤胤らが当時の日本の中国古典重視の学問に対し日本固有の古典などの精神より学ぶことを主張したこと。
 2つは明治時代の1880年伝統的日本文化の保護ないし復活を目指す取組が日本に哲学を教えるために来日したアーネスト・フェノロサ岡倉天心らが
東洋の精神主義を主張したこと。(新しい本に「九鬼と天心」北康利・PHP)

 現在の日本がグローバル化の必要性は理解するにしても 小学教育から漢文という深い学問より実学の英語を教科に入れる文科省の考えは そこの浅い人間を作るようでわからない。