集英社新書「コーカサス・国際関係の十字路」広瀬陽子著

コーカサス地方」という言葉を少年時代覚えた。この地域の民族の歌とともにのどかな地域と思いきや、その後「ナゴルノカラバフ」「アゼルバイジャン」「チェチェン」「アルメリア」そして北京オリンピック時に問題となった「グルジア」がこの地域である。この地域だけで50の民族が住んでいる、という。
1か国は何百万という単位であるが 30万人 50万人という国もある。
日本の人口1億人から判断すると 随分小さな単位で争っており 「大同団結」出来ぬものかと考える。 それくらい過去の歴史 つまり宗教、言語、祖先の係わりから来る血縁、地縁のつながり、あるいは国家の裏切りなどの積み重ねで 相互不信に陥っているのだろうと思う。

現代では「カスピ海」から出る石油で国際政治 資源争奪の大問題の地域である。「EU参加」希望のグルジアがロシアの妨害にさらされている。アメリカが相当の経済援助を行ない始めた。国際紛争のきな臭い地域である。

この本はこの狭いコーカサスを現代の資源戦争の要として 又 西欧の対ロシア戦略の要として研究まとめている。「資源問題」で注目の「中央アジア」とも近く カザフスタントルキスタンウズベキスタン、あるいは中国少数民族ウイグル地域との関係を考える場合に知識の整理のできる書物である。

この本を広く読むには「民族の世界地図」(文春新書)、「民族と国家ーイスラム史の視角より」(岩波新書)も面白いし 「石油と戦争」中堂幸政著(現代書館)はユダヤ教 イスラム教 キリスト教 東方キリスト教の変遷 分布を整理する面で面白い。
これらの混在が狭い地方で50の民族になっているのだろう。

これを書きながら「中南米が日本を追い抜く日」(朝日新書)とくにチリ編読んでいる。「シカゴボーイズ」という新自由主義を軍政でレーガンサッチャーより早く「臨床実験」したという。その弊害を克服しインフレ率 ベネズエラ16.97%アルゼンチン9.8%ブラジル3.14%コロンビア4.48%ペルー1.1%に対しチリ2.6%(いずれも2006年)という安定した経済を運営している女性大統領の国である。又いずれかの機会にまとめよう。

「太平洋に自分を置いて考えよう」と尊敬する故人から「グローバル経済」に入る昔1980年代にアドバイスを受けたことを思い出す。